5.1AIR
「仕事よ、さらば。日常からテイクオフ!」
HOME > さらばプロジェクト > さらばの達人
   

「済んだことよ、さらば。」

バックナンバー
かえる

今回の『さらばの達人』は、云わずと知れた、世界に名立たる“音楽王”ホッピー神山さん!インタビュー場所である多摩川のほとりに、カエルの大群と共に現れたホッピーさん。ライブ中には客席に投げ込まれることもあるというカエル君たちは、ホッピーさんの愉快な仲間。さて、そんなホッピーさんが“さらば”しているものは、

「済んだこと」  

キュートなカエルに負けじ劣らずチャーミングなホッピーさんの、ふわりとした軽やさは、この“さらば”と関係してるの…?その秘密を暴けるとあっては、期待に胸が高鳴ります!

―― 今日は、ピクニック気分で楽しくお話できて嬉しいです!では早速ですが、“さらば”について聴かせて下さい。

今やってることも、ちょっと前のことも、全部さらばですよ、私は。後ろのことは興味ないから。

―― “済んだことよ、さらば”ですね。

“さらば”と思ってる、ってわけじゃないし、“さらば”って宣言してるわけでもないけど、過去のことは興味も無いしどうでもいいから。ちょっと前のことも、昨日のことも、一年前のことも、関知しない。別に“消す”わけじゃないし、人から「あれはどうでした?」って云われたら、思い出して「ああでした」っていう風に云わなきゃいけないけど。


重たいと楽しく進めないんですよ
Life is improvisation


―― 音楽以外に於いてもですか?

うん。そうしていかないと、色んな物が溜まったり、背負ったりして、重たいでしょ?重たいと、楽しく先に進めないんですよ。楽しいってことはね、いつでも飛び跳ねるようにどこかに行けたり、ポンと人に会えること。でも、常に自分の中でマストに掲げ「一分前のことも全て切り捨てて前に向かって行くんだ!」なんて強い意志では思ってない。そういう風にすると自分を縛るでしょ?「こうしなきゃ」って決めると、人間ってのは生き方がつまんなくなっちゃう。音楽でも「こういう音楽にしなさい」て云われて創ったら、たいして面白い物なんか出来やしない。自然界の物も全てそうだけど、音楽も、成り行きのモンでしょ?成り行きの物なのに、形やジャンルに捕らわれて縛ると、とても面白くない。

―― “次に何をするか”も成り行きとか?

いつも即興。インプロビゼーションで行く、ってのがいいんじゃないかな。でも、“今日は何時からミーティングがある”というような決まりごとは、勿論ちゃんとやりますよ。人間社会の秩序としてね。でも、例えばもっとざっくばらんな話で「今日はどこどこの八百屋へ行って、おいもとニンジンと水菜を買わなきゃ」って思ってるのもつまんない。行ってみたら、銀杏が安くてラッキーと思うかもしんないしね。

佇むホッピーさん
諦めよ!さらば生まれん創造の泉


―― 八丈島に引っ越すと伺いましたが、それも即興で決断を?

今は、そっちに行くと自分が凄く楽しく生きられる確信があるから。でも、狭い部落に入っていくわけだし、東京に仕事に来る交通費も高いし、リスクはある。尚且つ、天候で飛行機が飛ばないこともよくあるし。でも、飛ばなかったら諦めるでしょ。仕事には穴あけるかもしれないけど。まあ仕事へは1日前に出てくれば平気か。でもそういう“諦める”ことも必要。だって、東京に居て「今日は雨がひどいから」って理由で、今日は家でのんびりお茶飲むか、とは考えないよね。田舎の人とか農夫、漁師はみんなそう考えるじゃない。大工さんも。

“人生の中でどうゆとりを持っていけばいいか”ってことをみんな考えるけど、例えば“海外旅行で楽しい思い出を作る”でもなく、逆に、日々の一々のことを諦めていくことも大切かもしれないね。人間らしく生きるということ。それに、諦めると面白い。音楽をやるにしても、期待してやってしまうと面白くない。“どうせ音楽でしょ?”と思って、何にも期待がないゼロのところからやったほうが面白い。はなから「こんなものが出来るんだぞ」とかいうことは、諦める。ゼロからだと、創っていく過程でも自分なりのハッとしたパッションが常に得られるし、出来上がった物は凄く新鮮。“どうせ人間だし”“たかが音楽だし”と思って、いい意味で諦めていけば、凄く面白いものが出来上がる。

ユーモアが無い物は、かわいくないもんね

ユーモアがないものはかわいくない
 
 
―― そうやって生まれた作品に触れると、受け手の想像力もフレキシブルに働きますね!

二年半くらい前『意味のないものは意味がある』っていうアルバムを出したんだけど、これも、私のそういうメッセージ。意味が無い物のほうが、絶対に後で意味を持ってくる。最初から意味を与えたものはそこで完結してるから、後になって受け手の感情や想像から発展するプロセスでの意味は出てこないよね。
 
―― 新作の『もしもし、ピアノが弾けますよ(※1 )』も素敵なタイトルですね!
 

『もしもピアノが弾けたなら』っていう曲も昔あったけど、「私だって、ちょっとはピアノを弾きますよ」と自分から言い切ってみようかなと。でも、それもあまり意味は無い。だけどそれを聞くと、「ピアノ弾いてるんだな」っていうのは分かるでしょ。ピアノのアルバムタイトルって横文字とかになってることが多くて、あれって何なのかなって気がするんだよね。あれ、凄く日本的なオシャレなのね。でも、そういうこと云われてもよく分かんないでしょ?それよりか、私の場合は、生き方にしても音楽にしても、ユーモアが入ってることが凄く大切。“ふざける”っていうことじゃなくて、エンターテインメントという意味で、物事がはっきりしていなくて、いい加減に見えるってこと。尚且つ、“どうにでもなってどうにでも見えて、いい意味で笑えるもの”っていうのが一番楽しいはずなの。ユーモアが無い物は、かわいくないもんね。
 
※1 『もしもし、ピアノが弾けますよ〜If I were the piano』(M&K Records)
   :ホッピー神山ピアノソロアルバム。収録された珠玉の10曲は、なんと全て即興一発録り。



八丈島について語るホッピーさん

The エナジー☆アイランド


―― ホッピーさんのユーモアが、八丈島にも響き渡れば素敵ですね。
 
八丈島は、場所としてもすごくいい。休火山があってエネルギーもあるし、水も空気もいいし、勿論アレルギーなんかないし、春先の黄砂もあそこまでは届かない。そういう意味で完璧。あと、60kmくらい離れた箇所に青ヶ島っていう島があって、そこは人口が200人くらいなんだけど、そこに住む女性はみんなシャーマンだったりするの。そこの流れなんで、八丈島もそんな感じ。

元々は、江戸時代に思想犯が島流しされていた島だし。江戸幕府とそりが合わない宗教家とかね。同じ仏教でも宗派によって全然考え方が違ってたから、徳川家の宗派と違う仏教家とかは随分流されてますよ。昔は、お坊さんが政治を操っていたくらい、仏教と政治っていうのは密接だったから。で、そういう頭の良い人たちが、思想犯としていっぱい流されたところ。江戸時代には、そういった重い刑の人たちは、佐渡島か八丈島に流されてたんです。でも佐渡島は北で寒くて「地獄の佐渡」と呼ばれ、八丈島は、あったかいし食べ物も美味しくて「天国の八丈」と云われてた。だからみんな「八丈ならOK」て感じで、服役を終えても帰んなかったっていうくらい。八丈で奥さんをもらって、そのまま死ぬまでそこで暮らした人が殆ど。しかも、平均寿命が極短かった江戸の時代に、みんな80代くらいまで生きてた。

くだらないことこそ、面白い

くだらないことこそ、面白い


―― 島のエネルギーと、ホッピーさんの音楽が融合するところも観てみたいですね!

来年は音楽イベントを仕掛ける予定。内地の音楽が、向こうにはあまり来ないから。勿論音楽好きな人はいっぱい居るし、夏の音楽イベントや八丈高校のブラスバンド演奏会は盛り上がるんだけど、もっと他にも島に合うものを持ってくれば、更に楽しく観たり聴いたり出来るはず。お金の使い方がもったいなくて。行政のやることだから、島興しが、イコール島興しになってない。島興しだったら、内地の人間が八丈にイベントを観に来るか、人が移り住むかしないと行けないでしょ?だから、“もっと楽しい音楽やイベントがありますよ”、って云って人を呼び込もうと。先ずは手討ちで、行政とか絡めないで自分のコネクションだけで。隔月くらいで小さいイベントをやって、夏に大きいイベントもやって。電話一本でも「来てよ」って云ったら快諾してくれる友人に来てもらってね。PAとかのスタッフは大体もう揃えてるし。

最近よくある野外イベントはだいぶ形が変わってきて、主旨が音楽じゃなくて、“違う催し物なんだけど音楽もやりますよ”っていう形になっているよね。テクノイベントとかレイブとか。でも、そうじゃなくてもっとくだらないことでいい。くだらないことで、みんなが興味を持って来てくれればいいな、って思ってるんです。

―― 来夏が待ち遠しいですね!今日は楽しいお話をたくさんありがとうございました!


……………………………………………………………………………………

さて最後に、ホッピーさんの演奏を生で楽しみたいという方に嬉しいお知らせ。来る12月24日に、西荻窪サンジャックにて、ホッピー神山*ピアノ独奏会 『クリスマスイブ、ホッピー神山がピアニストになる夜!!』が催されます。ホッピーさんの溢れるユーモアで、イヴの夜を素敵に彩ってみてはいかが?

それではまた来月!See you again!♪


ホッピー神山(ホッピー カミヤマ)/音楽家


80年代を代表するスーパーバンド「PINK」キーボーディストとして一躍脚光を浴び、音楽プロデューサー、キーボーディストとしての評判を確立。東芝EMI「音楽王・1」「音楽王・2」、SONORE(仏)「Juice&Tremolo」などのリリース他、宮本亜門のミュージカル「サイケデリック歌舞伎・月食」の音楽を担当するなど精力的に活動。2006年、伝説のブリティッシュバンド、ソフトマシーンとの合体バンド『ソフトマウンテン』のCDが話題を呼んだ。
 
■ホッピー神山 WEBサイト http://hoppy-k.com/

 … … … … … … … … … … … … … …
ホッピー神山*ピアノ独奏会
『クリスマスイブ、ホッピー神山がピアニストになる夜!!』

12月24日 At 西荻窪サンジャック
会場 18:30 開演 19:30
料金:2500円+ワンドリンク(ミニオードブル付き)
予約はメールで受付です。mailto:sjnisiogi@gmail.com

■サンジャック http://pomkn.cocolog-nifty.com/kikaku/

★★★絶賛発売中!★★★

ホッピー神山『もしもし、ピアノが弾けますよ〜If I were the piano』
満を持して遂にリリースする、ピアノソロ即興一発録りの珠玉の10曲!

M&K Records MKCD-002mailto:mk_records@hotmail.co.jp%3Cbr%20/%3E




松本 玲子

STAFF NO.12
松本 玲子(マツモト レイコ)/女優・ライター


女優・ライター。『JIVE』での連載等、雑誌・フリーペーパーで執筆。TV東京『リトルホスピタル』CM『ぽすれん』出演、映画『アトピー刑事』主演、『TSUTAYA』CMナレ-ション等でも活動。ホッピー神山氏とのラジオ番組『cocoa lounge』でパーソナリティー担当。zero gravity sound systemボーカルとしてCD発売、'04PTNAグランミューズ東日本優秀賞受賞、北関東ピアノコンクール第三位等音楽活動も行う。
http://www.reico.org/



尾鷲 陽介

STAFF NO.5
尾鷲 陽介(オワシ ヨースケ)/カメラマン


1977年生まれ。北海道名寄市出身。
美大で工業デザインを勉強後、スタジオ勤務を経て
フリーで自由に活動しています。
http://e123.sunnyday.jp/

2007.12.08    「済んだことよ、さらば」
2007.10.26    「既成概念よ、さらば。」
2007.09.20    「反故よ、さらば。」
2007.08.13    「ストレスよ、さらば。」
2007.07.12    「リハビリよ、さらば。」
2007.05.21    「高音質よ、さらば。」
2007.04.30    「安定よ、さらば。」
2007.03.30    「流行よ、さらば。」
2007.02.19    「フィルムよ、さらば。」
2007.01.22    「和味よ、さらば。」
2006.12.22    「車よ、さらば。」